こんにちは、ほしにゃーです。
今回はツイッターで仲良くさせていただいている小春ちゃん(@55koharuno)の企画「私のとっておきの一冊」に参加させていただきます。
企画のルールは以下の通り。
- 自身のブログに「私のとっておきの一冊」というタイトルで記事を書く。
- 紹介する冊数は、お好きなだけどうぞ!
- 期限は21日の夜0時まで。
- #私のとっておきの一冊とハッシュタグを付けて、記事を書いたブログを貼り付けてツイート
- 本のジャンルは問いません。
”小春のきらきら日和”さまより引用
ということで、私のとっておきの一冊をご紹介します!
神様のボート/江國香織
著者略歴と個人的思い入れ
作者の江國香織(えくにかおり)は2004年に「号泣する準備はできていた」で直木賞受賞、そのほか数々の文学賞を受賞しており、多くの作品が映画化・ドラマ化されています。
代表作は「きらきらひかる」「落下する夕方」「冷静と情熱のあいだ」など。
私は男性作家の作品を読むことが多いのですが、江國香織さんの作品は一時期かなりヘビロテで読みました。
ただ個人的には『すごく好きな作品』と『読めない作品』に別れる作家です。
どれが『読めない』のかはご想像にお任せするとして、『神様のボート』はもちろん『すごく好きな作品』です。
『流しのしたの骨』と迷ったのですが、読了後の強烈さで『神様のボート』に軍配が上がりました。
でも一番読んだ回数が多いのは『流しのしたの骨』ですね。面白いのでおすすめです。
『神様のボート』とは
2002年出版、286ページ(文庫)と短めで読み易い作品です。
主人公葉子は『骨ごと溶けるような』恋をして娘草子を産む。しかし必ず戻ってくると約束した恋人は帰らず、葉子は娘を連れて各地を流浪する人生を選択する……というあらすじ。
最初は一つのチームだった二人ですが『恋という夢』に生きる母に気づき、現実を見つめて進んでいく娘の葛藤と成長ぶりが頼もしい。
なぜこの作品に惹かれるのか
※作品のネタバレを含みますのでご注意ください
江國香織は、日常に潜む狂気を淡々と描くのが上手い作家だと思う。
「『恋に狂う』とは言葉が重複している。恋とはすでに狂気なのだ」と言ったのはハインリヒ・ハイネですが、この作品の主人公葉子はとても長い間恋(=狂気)の中に暮らしています。
しかもその狂気に一人娘を巻き込んでおり、『恋人がいない場所に馴染むわけにはいかない』という不可思議な理由で幼い娘を日本全国連れまわしていく。
こりゃ娘にとってはとんでもないかーちゃんだな、と現実的な感想を抱きつつも、葉子の恋(狂気)の行く末を見届けたい気持ちでラストまで読み進めていくわけです。夢(母)と現実(娘)を行き来するという面白さもありますね。
作者が明らかにしていないので、夢なのか現実なのかわかりません。
もっと言えば、葉子が恋した相手が実在する人物なのかもわからないまま作品は終了します(娘がいるので父親がいることは間違いないのですが、葉子の脳内のような人物とは限らない)。
葉子の恋(狂気)はいつから始まっていたのか、それともすべて現実に起きたことなのか、全ては謎のままなのです。
とても危険なお話です。一人の人に生涯恋し続けるという純粋さ、頑なな純粋さは狂気も含んでいると思うし、現代社会でこれほどの恋はなかなかないでしょう。
ラストシーンが現実でも虚構でも、怖い。江國香織の作品の中で『狂気』をはっきり前面に出しているという点で他と違っています。
なぜ私が江國香織の作品に惹かれるのか。
それは日常に潜む境目の曖昧な『狂気』を体験し、自分の中で噛み砕き、その理由や背景を想像し納得したいから。『自分は普通』と思う誰しも、多かれ少なかれ狂気を抱えていると思うから。
『流しのしたの骨』はもっと穏やかで平凡(そう)なお話ですが、↑の欲求を満たしてくれるしカタルシスを得られるので好きな作品です。狂気という言葉が強すぎるならば、各人の抱える『業(ごう)』とか『魂のバランス』とか、そんな感じ。そういうものに、私は惹かれるのです。
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